第六回


(04年12月5日)

なんともはや、およそ1年半ぶりにもどってまいりました。たからしげる、です。
つっても、知らねえよ、んなやつ、なんていわないでね。2003年5月に
『落ちてきた時間』(パロル舎・1575円)をだして以来、またたくまに1年半が
過ぎてしまいました。このほど(12月ですね)ようやく7冊目の単行本
『ギラの伝説 失われた宝剣と精霊の物語』(小峰書店・1890円)が出版の
運びとなり、新しく単行本がでたらこのコーナーも更新しようという当初の思い
込みというか、ねらいにそって、キーボードをたたきはじめた次第です。
 あれからいろいろありました。ま、どっちかといえば、日々の暮らしを支える
本業のサラリーマン(新聞記者ですが)としての生活が忙しかったというのは嘘
いつわりのないところではありますが、決して作家の仕事をさぼっていたわけで
はありません。そんなに多くはないけれど、この1年半にやった作家としての仕
事をまとめると、以下のようになりますね。はい。

 2003年7月 「コウタのお告げ」
(小学館「小五教育技術」7・8月合併号収録)

 2003年10月 「ま夜中の墓場へかえるバス」
(岩崎書店『平成うわさの怪談6 のろいをまねく一輪車』収録)

 2003年11月 「奇跡のマフラー」
(学習研究社「話のびっくり箱/2003年5・6高学年・下」号収録)

 2003年11月25日−2004年1月30日「ぼくをさがして(全50回)」
(「毎日小学生新聞」に連載)

 2003年12月 「訪問者」(産経新聞)

 2003年12月 「アリババと40人の盗賊」
(ハートミュージッCD「声ものがたり」収録)

 2004年2月 「はだかの王様」
(ハートミュージックCD「声ものがたり」収録)

 2004年5月 「船乗りシンドバッドの冒険」
(ハートミュージックCD「声ものがたり」収録)

 2004年11月 「消えたサッカーボール」
(学習研究社「話のびっくり箱/2004年11月 5・6高学年・下」号収録)

 でもって、多くの時間は小峰書店の母なる大地のような編集者・Iさんとタッグを
組んで『ギラの伝説 失われた宝剣と精霊の物語』にかかりきっていたわけ
ですが、どんなお話かといいますと、これが異世界を舞台にした冒険ファンタジーです。

 日本の、とある町で暮らす姉(小6)と弟(小4)。2人は幼いころから、
いまはもういない父親のすすめに従って剣道を習っています。姉の麻矢は小学生の
全国大会女子の部で優勝するくらいの腕前ですが、弟も近ごろめきめきと腕を上
げています。夏休みのある日の午後。麻矢は、素振りのフォームをみてくれという
弟の好樹にさそわれて、2人で家の近くの公園にいきます。でも、うだるような
暑さにたまらず、もうすぐクリアできそうなテレビゲームに決着をつけたいと
いう欲求もあって、麻矢は1分でもはやく家に帰りたい。そんな焦りの気持ちが
いけなかったのでしょうか。好樹が投げつけてきてキャッチできなかったゴム製
のスーパーボールの行方を追って公園から道路にとびだしたところ、
走ってきた車にはねられてしまうのです。

 物語はここから本編です。麻矢は車にはねられた衝撃で、その魂が異世界へ
ぶっとびます。そこは銀河系をはるかにはなれた、どことも知れない別の銀河系
の一角にある、ギラという太陽のまわりをまわる惑星アオ上の王国でした。麻矢
の魂は、国王ハッタリッペン7世が支配するカイの王国の海辺にあるメジナ村で
暮らす少年ヤーの体に、なぜか入りこんでしまうのですね。
 ヤーは海岸で漁をしているうちに、あやまっておぼれそうになり、気を失った
ときに体のなかに入ってきた麻矢の魂を、アカペリの森からやってきた精霊では
ないかと勘違いします。一方、麻矢は、過去の記憶をすっかりなくしていて、
自分がどこのだれで、どうしていま、見知らぬ世界のこんな(ちょっと不良っぽい)
少年の体に宿っているかがさっぱりわからない。
 少年ヤーは、精霊だとばかり思いこんでいる麻矢を宿したまま、自分がおぼれ
た原因になったナイフ(水中の岩に当てただけで割れてしまった)を作った
刀鍛冶師のタイエジャに文句をつけるため、ハッシ(地球上の馬と犀を足して2で
割ったような、この世界の草食動物)にまたがります。
 そして、いきついたタイエジャの工房で、たまたまそこにやってきていた、
ひげづらの首領ギンギー率いる盗賊団と鉢合わせ。タイエジャには、やさしい妻の
メイと、美しいひとり娘リーナがいるのですが、争いごとを避けようとした麻矢の
機転によって「魔術師」を装ったヤーは、工房でみつかった(ヤーが呪いをか
けたという)幻の宝剣を国王のもとに届け出るため(そうしないと呪いはとけ
ず、盗賊団の命はあすをも知れないという設定になっている)、タイエジャの家
族3人と盗賊団ともども、国王の城があるラメルの都をめざすことになるのです。

 父親をはやくに亡くし、再婚した母親が生んだ弟ヨーとともに暮らしている
孤高の少年ヤー(剣が強い)。剣道とテレビゲームが大好きだったが、いまは自分
がどこのだれなのかわからない(精霊だと思われている)麻矢。美しくてどこか
気高いリーナ(ヤーと恋に落ちるのですね! しかも、その正体はなんと……)。
盗賊団の首領であらくれのひげ男だが、どこか憎めないギンギー。その手
下たち(4人の男どもはさまざまなキャラです)。そして、かつて王家に伝わっ
ていた伝説の「ギラの宝剣」を何者かに盗まれてからは、后にもひとり息子の王子
にも先立たれた上、孫娘のカリーナ姫も行方不明中だという孤独の国王ハッタ
リッペン7世。その国王の妹を妻に迎え、いまや国王の座を虎視眈々とねらって
いる悪賢くて腹黒い領主トマス公。その右腕でおそろしい毒蛇マサゴヘビの毒つ
き吹き矢を自在にあやつるファリ(アルジャンという偽名も使います)。ほかにも
豊富な登場人物で展開する物語の分量は(400字詰め原稿用紙換算で)
370枚になりました。

 この物語、村山早紀先生には、当初200枚くらいしかなかった第1稿のときに
(3年前だっけ?)初めて読んでいただいて、懇切丁寧なご指摘、
ご指導をいただきつつふくらましていった作品です。
 このコーナーをお借りして(コーナー自体も借りているんだっけ)、
改めてお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
 いやあ、それにしても「たからのコーナー」、いつまでもこの丘に寄生している
わけにもいかず、現在ついに、手探りながらも「たからしげる公式ホームページ」
を制作中。近々、独立することになるかもしれません。そのときもみなさま、
ひきつづきどうぞよろしくお願いしまーす。

 2004年12月  たからしげる


いえいえこちらこそ、たから先生には、いつも美味しいものをごちそうに
なったり、人生の先輩として、いろんなお話をしていただいたりと、
お世話になりっぱなしで…ほんと、申し訳なくて ^^;
この「たからのコーナー」は、ささやかなお礼のつもりでたちあげたもの
だったのですが、ついに、たから先生サイトができるのですね。
新刊情報はもちろんとして、めるちゃん日記とか、読書日記、エッセイなんかも
よめちゃったりするのでしょうか? ちょっとどきどきです。

そして、「ギラ」。懐かしい…。
もう三年になるんですか、私があの原稿を拝読したときから。
正直、当時は、荒削りなところもあったお話でした。でも、きらきらした想いと、
情熱が光るお話だったんですよね。
たから先生の一番大事なテーマ、失われる命と思い出に手を差し伸べる思いが
一番、強く表れていた作品だったから、なのかもしれません。

私は、たから先生の、叙情短編の世界が好きですが、
「ギラ」の冒険と詩情の世界も、とても素敵だと思っています。
名編集者Iさんのご指導の元、きっとクオリティ高い作品に仕上がったであろう
「ギラ」との再会を、心から楽しみにしています^^


(村山早紀拝)